人の文章を勝手に添削するブログ

「世の中に蔓延る悪文を退治したい」。そんな思いで書籍やウェブ上の文章を勝手に読みやすく添削します

勝手に添削:『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』 (1)

さっそく以下の書籍を取り上げ、日本語として誤っている部分や読みにくい部分、冗長な部分を添削・校正していく。

 

序章 人類の出現・文明の誕生

 当初、この主張は「人間は最初から神の姿に似せてつくられた」という教えがあるキリスト教徒や、人類の起源がヨーロッパにあると信じたい、当時アフリカを「支配」していたヨーロッパの人々に、まったく受け入れられませんでした。人と猿の中間の生き物の存在を認めることは、『猿の惑星』の世界を認めるのと同じような思いだったのかもしれません。

山崎 圭一. 一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書 公立高校教師YouTuberが書いた (Kindle の位置No.437-440). SBクリエイティブ株式会社. Kindle 版. 

 まず「~という教えがあるキリスト教徒」の部分だが、教えがあるのはキリスト教であってキリスト教ではない。この部分だけを直すのであれば、「~という教えがあるキリスト教の信者」あるいは「~という教えを信じるキリスト教徒」とすべき。

 次に「人類の起源がヨーロッパにあると信じたい、当時アフリカを「支配」していたヨーロッパの人々」の部分は、修飾部分が長い。また「支配」にカギかっこを付ける理由が薄い(カギかっこは比喩や「いわゆる」的な意味で付けることが多いが、今回はその意味の通り「支配」しているので該当しない)。

 そもそも一文が長いので、ここは以下のように2文に分けて修正することを提案する。

 当初、この主張はキリスト教徒やヨーロッパの人々にまったく受け入れられませんでした。キリスト教には「人間は最初から神の姿に似せてつくられた」という教えがあり、ヨーロッパの人々は当時アフリカを支配しており、人類の起源がヨーロッパにあると信じていたからです。

 最後の「人と猿の中間の生き物の存在を認めることは、『猿の惑星』の世界を認めるのと同じような思いだったのかもしれません」は文の構造に問題がある。「Aを認めることはBを認めるのと同じような思いだった」「A'はB'と同じような思いだった」と省略してみると違和感がより強くなる(A’とB’がどちらも人物でないとこの構造は成立しない?)。ここは「A'はB'と同じことだった」と修正する必要がある。

 また「人と猿の中間の生き物の存在を認める」は「の」が3回も登場して幼稚な印象を与える。「人と猿の中間の生き物が存在すると認める」くらいでどうだろう。

 修正案は以下の通り。

人と猿の中間の生き物が存在すると認めるのは、『猿の惑星』の世界を認めるのと同じことだったのかもしれません。

 

* * *

 次にこの段落を見てみる。

「直立二足歩行」と簡単な打製石器である「礫石器の使用」など、明らかに類人猿と異なる特徴を持つことがわかると、はじめはこの種の化石を人類と受け入れなかった人々も、最古の人類と認めざるを得なくなります。

山崎 圭一. 一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書 公立高校教師YouTuberが書いた (Kindle の位置No.443-445). SBクリエイティブ株式会社. Kindle 版. 

 まず違和感を覚えたのは、「簡単な打製石器である「礫石器の使用」など」の部分。「簡単な打製石器」は礫石器(れきせっき)を説明しているが、「礫石器の使用」までカギかっこで括られているせいで、「簡単な打製石器」=「使用」と読めてしまう。ここはカギかっこを使わない方がよい。

 ただし、カギかっこを外すと「直立二足歩行」「礫石器の使用」という並列関係が崩れてしまう。そのため直立二足歩行の方もカギかっこを外す必要があるが、分かりやすさを優先して「直立二足歩行をする」「礫石器を使う」と括るとよさそうだ。

 また「明らかに類人猿と異なる特徴を持つ」の部分は、細かいことだが修飾語と被修飾語を近づけた方がよい。つまり、「明らかに」は「異なる」を修飾しているので、両者を近づける。

 まとめると以下のような修正案になる。

「直立二足歩行をする」「簡単な打製石器である礫石器を使う」など、類人猿と明らかに異なる特徴を持つことがわかると、…

 

* * *

猿人の段階では、まだ脳の容積が小さく未発達なため(現在の人類の3分の1ほど)、『猿の惑星』に登場する猿たちとは違い、まだ言語も火の使用も行われていませんでした。

山崎 圭一. 一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書 公立高校教師YouTuberが書いた (Kindle の位置No.447-449). SBクリエイティブ株式会社. Kindle 版. 

 ここは太字+下線部分の表現が受け入れられない(実際の書籍でも太字+下線)。「火の使用が行われる」とするのは冗長だ。シンプルに「火が使われる」とすればよい。そもそも「言語も火の使用も」は並列関係が成立しておらず、「言語の使用も火の使用も」とする必要がある。

 このように動詞をわざわざ名詞化するのは基本、冗長になるのでやめたほうがいい。似たような例に「資料の作成を行う」「結果の報告を行う」などがある。それぞれ「資料を作成する」「結果を報告する」とした方が簡潔で絶対に良い。

 結局のところ、以下で十分である。

…まだ言語も火も使われていませんでした。

 

* * *

 まずい。序章だけでも気になる点が山ほどある。このペースでは絶対に終わらないが、気ままに更新していく。